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衆議院議員選挙結果は株式市場に影響しない

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「バブルはいけない。投機はいけない。」そして、「確かな価値を生み出す実業とは異なる虚業の金融でそんなに儲けるなど言語道断だ。世の中を侮り虚業でカネ儲けに血眼になっている強欲な連中に対して規制を強化していかなければならない。そもそも儲かっている(法)人は許せない。儲けている(法)人からおカネを徴収して低所得者に分配すべきだ。」
金融危機発生のたび、特に金融危機後の選挙の時に、こういう議論が起きます。
本当にこれでよいのでしょうか。

株式市場はリスク・キャピタルを提供する場です。流動性が確保されることによって多くの参加者が少しずつリスクを共有することができるのです。流動性の確保には投機行為も重要です。投機=博打というイメージが日本にはありますが、投機の英語はスペキュレーション。もともとの意味は沈思・推測。ただし、根拠に乏しい推測の意味です。将来のことなど、誰にもわかりません。株式は債券や預金などとは違い、元本保証はありません。株式に資金を投じることは本来極めてスペキュラティブ・投機的な行為なのです。

元本保証の責務を負っている資金提供者は現状が変化することを嫌います。しかし、それでは、不況のたびに事業者間の競争によってマージンは低下するだけです。では、国内の同業者が合併して競争を緩和すればマージン低下は避けられるのではないか。しかし、市場も競争もグローバル化・ボーダーレス化している現在、国内事業者で合併を繰り返しても、世界での競争力は強化されません。1929年の大恐慌の悪化の原因であった世界貿易の縮小を生み出した保護主義政策の推進という選択肢もありません。結局、製品・オペレーションなどの何らかのイノベーション(全く新しい技術や考え方を取り入れて新たな価値を生み出し、社会的に大きな変化を起こすこと)が不可欠なのです。

業界全体として横並びの重複投資を行ってしまっては、各事業会社はじり貧状態・低マージン状態に置かれてしまいます。業界再編・統合によってマージンを向上させること、高いマージンは悪ではありません。イノベーションを起こすための必要条件なのです。しかし、それは第一歩にすぎません。どのようなイノベーションを起こすか、が重要なのです。

イノベーションはこれまでの常識を革新するものです。既存システム・やり方の破壊を伴うものです。イノベーションはこれまでの仕組み・体制・製品・事業を破壊しますが、それは新しい仕組み・体制・製品・事業を創り出すためなのです。株式はまさにイノベーションを生み出すための資金を提供する仕組みです。株式は既存体制の破壊を促すものなのです。これまでの常識を革新しても将来本当にうまくいくかどうかわからないイノベーションを実現するための資金を提供するものですから、株式はまさに「リスク・キャピタル」ということになるのです。

「貯蓄から投資へ」というスローガンは日本の個人の金融資産における株式投資への比率を引き上げよう、ということを意図したものでした。まさに、キャッチアップ型経済社会からイノベーション創出型経済社会への転換を意図したものだったのです。しかし、今回の金融危機の後、「貯蓄から投資へ」というスローガンは消滅した感があります。


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